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映画「キリストの受難」米で公開

 【CJC=東京】イエス・キリストが十字架にかかる直前12時間を描いた映画『ザ・パッション・オブ・ザ・クライスト(キリストの受難)』が2月25日、米国の約2800映画館で公開された。
 熱心なカトリック信者でもあるメル・ギブソン監督が、私財約2500万ドル(約27億円)を投じて制作したこの映画、初日から多くの映画館が観客で埋まり、早くも約3000万ドル(約33億円)という記録的な売り上げが見込まれて、興行的には大成功。
 捕らえられたキリストがむちで打たれ血まみれになるシーンや、十字架上の死までの場面が約2時間15分の上映時間の多くを占めており、映画の描写について「残酷」「史実と違う」と批判するなど米メディアが連日大々的に取り上げた。公開に合わせ抗議運動が盛んになり、時ならぬ“宗教論争”も巻き起こったが、それも計算済みだったと見られる。
 実際に公開されると、カンザス州では映画を見た女性が心臓まひを起こし死亡。またキリスト処刑の責任がユダヤ人にあると描かれているとして、内容への反発も起きるなど、論争は収まるどころか激しさを増している。
 映画を見た教皇ヨハネ・パウロ二世が「きわめて正確」と語ったと伝えられ、論争に拍車をかけたが、バチカン(ローマ教皇庁)は教皇発言を否定している。
 キリストを死に追いやったのはユダヤ人だとする一部の認識が反ユダヤ主義の根底にあることを再確認させられる事件も起きた。デンバーのペンテコステ派の教会では25日「ユダヤ人が主イエスを殺した」という看板を掲げたものの、抗議を受けて同夜には下ろす羽目になった。モーリス・ゴードン牧師は、聖書を読むよう奨励するのが目的だと釈明したものの、「現存している誰かを指したのなら不愉快かもしれないが、これは2000年の歴史の一部だ」と本音もちらり。
 ニューヨーク中心部の映画館には25日夜、ナチスの強制収容所の収容服姿のユダヤ系市民らが上映中止を求めて集まり、「ヒトラーはこの映画を誇りにするだろう」などと訴えた。
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 日本では「パッション」の題で5月に公開予定。□

KIRISUTO.INFO Last Update : 2004/03/01