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反アパルトヘイトのエリス氏にテンプルトン賞

 【ニューヨーク=ENI・CJC】クエーカー教徒で南ア・ケープタウン大学の応用数学教授ジョージ・F・R・エリス氏(64)が2004年度『テンプルトン賞』受賞者に決まった。3月17日にニューヨークの国連教会センターで『ジョン・テンプルトン財団』から発表された。同氏は平和主義者として、また南アのアパルトヘイト(人種差別)への反対活動で知られている。
 『テンプルトン賞』は科学を宗教に結び付けることに貢献した人を対象に米国出身の投資家ジョン・テンプルトン氏が設けたもの。正式には「精神的実在に関する研究や発見の進展のためのテンプルトン賞」と言い、賞金79万5000ポンド(約1億5000万円)。エリス氏は34番目の受賞。
 同財団は賞の目的を「専門的技術の幅広い分野から有能な人材を引き出し、神学と科学との間に新たな識見を追求すること」と言う。
 エリス氏は、科学と宗教との対話に「大胆で革新的な」貢献をした、と評価された。そのような対話は「現在取り組むことの出来る最重要課題の一つ。宇宙を見つめ、我々自身の存在を理解する方法を基本的に形づくる」とエリス氏は言う。
 エリス氏の業績の基礎は、科学の合理性と、宗教への帰依と期待とのバランスをとるという主張にある。これは南アが人種差別国家から多民族による民主国家へ平和的に移行したことに自身が関わったことに負うところが大きい、として「未来への全ての希望をあきらめ、人種的な大虐殺へ国が陥るのが当然だと思うことがしばしば合ったが、決してそうはならなかった」と語った。
 ネルソン・マンデラ前大統領とデズモンド・ツツ元大主教の「変革行動」とも呼ぶべきことがなかったら、こうはならなかった。その結果、南アは「合理性の計算」を混乱させた、とエリス氏は言う。「ガンジーやマーチン・ルーサー・キングの非暴力という変革の力は、敵を友人に変えることが出来る。それが安全の本質だ」と、エリス氏はインタビューで語った。
 同氏のキャリアは多彩な分野にわたっているが、自らのキャリアが「視野の広さ」と結びつき、科学的研究が自身の社会的な行動により深められ、またその逆もあったと言う。
 もう一つ見逃せない要素は同氏のクエーカー信仰。平和主義的な立場に影響したに止まらず、科学的な世界観とも両立している。「私たちは教義を信じず、行いを信じる」と言う。
 エリス氏は、賞金を南アでの様々なプロジェクトを支援する計画。黒人青年層への教育改善、貧困を根絶するのを助けるため南アの全市民を対象にした経済的支援などが考えられている。
 テンプルトン賞は初期にはビリー・グラハム氏やマザー・テレサなど著名な宗教家に授賞していたが、近年は科学と宗教の世界で活躍している科学者の受賞が多い。2001年は生化学者で聖公会司祭のアーサー・ピーコック氏、02年は数理物理学者でやはり司祭のジョン・ポーキングホーン氏、03年は環境倫理学者のホームズ・ロルストン三世が受賞している。
 授賞式は5月5日、ロンドンのバッキンガム宮殿でエジンバラ公が臨席して行われる。□

KIRISUTO.INFO Last Update : 2004/03/23