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映画「パッション」は反ユダヤ感情を軽減?

 【CJC=東京】米国では、メル・ギブソン監督の映画『キリストの苦難』は、ユダヤ人への敵意をあおる、と批判するユダヤ人評論家の予測とは逆に敵意を薄めている、と最近の調査結果は示している。
 米国のキリスト教ニュースが『ユダヤ人と社会研究所』(IJCR)の調査として伝えるところでは、同映画を見た米国人の24%が、キリストを十字架に付けたことに当時のユダヤ人は責任がない、と言う。調査は3月5〜9日に全米で無作為に抽出した成人1003人を対象にに行われた。
 今日でもなおユダヤ人の責任だとする見方は2%未満だった。「映画が世界の他の場所では異なった影響力を持つかも知れないが、調査に見る限り、この映画が大きく反ユダヤ感情をあおってはいない」とIJCRのゲーリー・トビン博士。
 「映画自体、またそれ以上に映画に関する議論さえ肯定的な効果があったし、それは朗報だ。ユダヤ教やキリスト教指導者の中には、映画がユダヤ人に対する敵意の波を起こし、さらには第二バチカン公会議の建設的な結論さえ打ち消してしまうのではないか、と懸念したことは理解出来る。しかしそうはならなかった。世界中で見られる反ユダヤ主義の興隆とか、キリスト殺害の中心課題を反ユダヤ偏見の中に置く考えなどを見ると、懸念も根拠のないものではないのだ」と言う。
 調査回答者の64%は、映画がイエスの生涯の目的を正確で十分に描写しているとし、反対は13%だった。
 映画を見た人や見てはいないが事情に詳しいと答えた人の多く(83%)は、現代のユダヤ人にも責任があるか否かと言う見方に映画は影響しないと答えている。映画によってユダヤ人の責任だという感じを強めた人は2%、逆にそういう感情が薄れた人は9%だった。
 映画を見た146人では、映画には影響力が全くなかったと言う人が80%、ユダヤ人の責任という感じを強めた人が5%、今日のユダヤ人に責任があるという感じを弱めた人が12%だった。
 「映画の中の反ユダヤ的なイメージに関して引き起こされた疑問は、キリストの死にユダヤ人の果たした役割という問題を広く公開するのに貢献した。対話と率直な議論をして、米国のキリスト者とユダヤ人の結束が強いと信じることは、望ましいことだ」と、トビン氏は言う。
 調査の誤差はプラスマイナス3・1%。映画を見たか、または詳しいとした人で見ると、誤差はプラスマイナス3・7%。□

KIRISUTO.INFO Last Update : 2004/03/29