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米国ロサンゼルス郡シンボルマークのキリスト教色が問題化

 【CJC=東京】米市民的自由連合(ACLU)のメンバーがロサンゼルス郡のシンボルマークシールに十字架があるのを発見した。市章は市の歴史的遺産を示していることから、スペイン人によるキリスト教布教にまでさかのぼって取り入れられたもののようだ。
 しかしACLUは違憲だとして、十字架の消去を求め訴えている。訴訟もこれが初めてではなく、これまでにも各地でやり玉にあげて来ている。小さな町に行って、憲法違反を大声で叫び、訴訟する、と言うと、町側は勝訴するとしても裁判に税金を使いたくないとして、要求に屈してしまう例が多い。
 米福音派系のEP通信が、保守派キリスト教雑誌『ワールド』の記事を紹介している。
 同誌は、「好戦的な」世俗主義者が市章のような視覚的なシンボルの上で政教分離原則を主張するのに、肝心な名称の方を弾劾しない理由が明らかでない、と疑問を投げかけている。
 「ロサンゼルス」とは「天使」の意味。カリフォルニア州の州都「サクラメント」はスペイン語で秘跡を表わす。
 第9連邦控訴裁が、宣誓の際に「神」という言葉を入れて良いか、判断する場所は「サンフランシスコ」だが、そこは聖フランシスにちなんで名付けられた都市。政教分離原則も教会と地理との分離までは強制出来ないのではないか。
 米国では市町村の多くがカトリック教会の聖人にちなんで命名されている。カリフォルニア州には、地図をざっと見ただけでもサンタアナからサンイシドロまで60例がある。
 カリフォルニア州だけだけではない。ミズーリ州ではセントルイスからジュヌヴィエーヴまで21例。テキサス州には、名前が「セント」「サン」「サンタ」で始まる27例がある。
 これでカトリックがそれらの都市の宗教であることを意味することになるか。プロテスタントはこれらの都市で訴訟が起きたら賛成するべきだろうか。
 プロテスタントが歓迎する地名もある。聖書に関連したもの。ペンシルベニア州ベスレヘム(ベツレヘム=新共同訳聖書の訳語、以下同じ)、インジアナ州ゴセン(ゴシェン)、コネチカット州カナーン(カナン)など、さらには「ザイオン(シオン)国立公園」もある。「ベサニー」(ベタニア)という地名も数州で見られる。
 キリスト教信仰に直接関係するものも多い。サンタフェは「聖なる信仰」を、サンタクルスは「聖十字架」を、コーパスクリスティは「キリストの体」を意味する。ニューメキシコのサングレ・デ・クリスト山は「キリストの血」にちなんで名付けられた。スペイン語を話す移民にとって、これらの名前の意味は非常に明確だ。
 ロードアイランド州プロビデンス(摂理)やテキサス州トリニティ(三位一体)はどうか。都市名には止まらない。ミズーリ、ケンタッキー、イリノイの各州には「クリスチャン郡」があるが、そこの居住者は皆キリスト者でなければならないか。そのような排他的な名前の郡に住んでいる非キリスト者はどのように感じるというのか。
 言葉は視覚的なシンボルよりはるかに多くの意味を伝える。公共の場から宗教色を排除しようというのなら、ACLUは名称問題とも取り組むべきだろう。今度は自治体側も黙ってはいられない。市名を変えるとなったら、市章だけでなく封筒、用箋などの文房具、地図、地図帳、商工会議所パンフレットなどすべてを作り直さなければならなくなり、訴訟費用よりかかることは確かだ。
 キリスト教と関係のある地名で苦しむ人がいるとは思えないし、それが国教制定につながると思う人はいないだろう。それなら市章問題はどういうことになるのか。
 キリスト教は昔も今も米国の文化資産であることは否定できないし、世俗主義者がどう闘おうと、経費の面からだけでも変更は無理なのだ。□

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