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米国の教会でオルガニスト不足さらに深刻化

 【CJC=東京】会堂にパイプオルガンを備えたい、と言う教会は日本でも多いが、弾き手がいなくなる時のことまでは考えていないとしたら、米国の現状に注目すべきかもしれない。有力紙『ワシントン・ポスト』の記事もその一つだ。
 16歳のときに教会のパイプオルガニストになったデボラ・バグビーさん。それは牧師だった父親の期待に応え、礼拝を助けることだった。35年後の現在は『ホーリー・コミュニオン教会』のオルガニストであり、音楽担当牧師だが、同教会はバグビーさんと出会うまで6カ月かかった、という。
 『ワシントン・ポスト』紙によると、バグビーさんがいた教会は後任者を今も捜している。力量のあるオルガニストが全国的に不足していることの反映だ。
 「教会はだれか善意の演奏者が見つかると思いがちだ。しかし今日では教会が報酬を出さなければならなくなっている。教会オルガニストは数多く演奏し練習しなければならないのだ」と、バグビーさんは言う。
 オルガニストが高齢化し相次ぎ引退するようになったことも事態を深刻化させている。若手の音楽家は報酬が低いので敬遠し、まずパイプオルガンに取り組もうとする人が少ない。そこで教会は国外、特にイギリスに目を向け出している。
 米オルガニスト組合などでは、将来の教会オルガニストの層を厚くしようと、子どもたちを引き付ける計画を始めている。主要な音楽学校では奨学金で学生を捕らえようとする所もある一方、学科を閉鎖する所も出ている。
 問題は複雑だ。これは日本でも同じことだろう。オルガニストは、高度の訓練を受け、学位をほとんどが持っている。毎週、多くの時間を難しい曲の練習に当てている。「16世紀、17世紀、18世紀の非常に複雑な音楽だ」と、バグビーさん。「オルガニストはまた、聖歌隊の指揮を引き受けることが多い。それも負担を増やす。それなのにオルガニストは報酬が不十分」とも言う。
 オルガニスト組合は全米と国外で2万1000以上のオルガンと合唱団を担当しているが、博士号を保持しているフルタイムのオルガニストの場合約4万7000ドル(1ドルは約110円)から6万3000ドルの基本給を提示している。
 修士の場合は4万2000ドルから5万6000ドル、博士のパートタイムなら2万5000ドルから3万5000ドル。しかし、多くの教会はこの指針に従ってはいない。
 小中学校が音楽関係予算を削減しており、古典的で神聖な音楽の授業に出て来る子どもの数も減少している。政教分離を懸念する大学では宗教音楽課程設置に二の足を踏む所も出ている。全国音楽学校協会の統計では、オルガン音楽で学位を取得しようとする学生の数が1985年の728人から2000年には527人にまで減少している。
 イリノイ州エバンストンのノースウェスタン大学は、この1月に教会音楽課程を閉鎖した。ボストンのニューイングランド音楽院も有名なオルガン課程を無期休止した。
 教会が礼拝を「近代化」する例が多くなっていることも見逃せない。キーボード、ドラム、エレクトリックギターなどでR&B、ロックなどを演奏するのだ。
 一方で明るい将来を描けそうな話もある。テキサス大学オースティン校はオルガンの修士課程を開設する。ノースウェスタン大学でも宗教音楽の修士課程開設の準備を進めている。
 「オルガンは魅力的な、すばらしい楽器なのだ。それにオルガンが教会と結び付いていることは確かで、それは守られなければならない」と同大学の閉鎖された教会音楽課程のクリスティン・マーシャルクレーマー講師は言う。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2004/09/06