【CJC=東京】教皇ヨハネ・パウロ二世(84)の5冊目になる著作「記憶とアイデンティティー」(イタリア語)の中で、1981年5月にバチカンで起きた自身の暗殺未遂事件について、共産主義国が黒幕だったと示唆した。共産圏黒幕説について、教皇自身が言及するのは初めて。
事件について「犯人(トルコ人)の背後にはしっかりした組織があった。それは20世紀に生まれた暴力的なイデオロギーの結果である」と指摘、「この邪悪(共産主義)は、善が生まれるための好機だった」と述べ、共産主義は自由、民主主義が生まれるための「必要悪だった」とした。
至近距離からの発砲が奇跡的に外れたことについては「誰かが弾を別の方向にそらせた」と述べ、神の加護があったとの確信も語っている。
本は、93年に友人のポーランド人哲学者2人に語った内容を自身で手直しした。今後、14言語に翻訳が予定されているが、日本語訳は不明。□