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教皇の主張に疑義示す神学者、倫理学者も

 【CJC=東京】植物状態のテリ・シャイボさん(41)の両親ボブ・シンドラー、メアリ・シンドラー夫妻はカトリック。その娘の延命を願う動きは、バチカン(ローマ教皇庁)の機関紙『ロッセルヴァトレ・ロマノ』でも支持されるなど、栄養補給装置を外すことに教会の公式な反対姿勢は変わらないが、倫理学者や神学者の中には、教会の伝統的な教義や近代医療に対応した生命倫理基準と矛盾していると主張する人も出てきた。シャイボさんの現状と永続的な介護による不必要な負担を長引かせる方が、道徳的に問題だというもの。
 米紙『シカゴ・トリビューン』によると「彼女は確実に植物状態である。処置の全ては生物学的な状況維持以上のものではない。それは生命から邪神を作り出すことに近い。偶像崇拝に似ているように思える」と、マサチューセッツ州ウースターの『ウースター・ポリテクニック研究所』のトーマス・シャノン教授(宗教、社会倫理)は語っている。
 昨年、教皇ヨハネ・パウロ二世は、無能力状態の患者から栄養補給装置を外すのは不道徳であり不当な「省略による安楽死」だ、と指摘した。さらに「永続的な植物状態」という医学上の分類は侮辱的だ、と述べた。
 「植物状態が1年以上持続した後には回復の望みがほとんどないとしても、それで患者に食物や水を与えるという最低限の介護の放棄や中断を倫理的に正当化出来るわけではない」と、教皇は言う。
 デプレーンズの『シーズンズ・ホスピス』のスーザン・ドラン所長は、教皇の声明でカトリックの同僚の動揺ぶりを思い出したが、結局バチカンの方針は効果がほとんどなかったと言う。「率直に言って、家族や愛する人たちと病室の中にいる時、そこではカトリックであるとかルーテル派であるとかは問題ではない。個々の判断で決まる。『教皇の言われたことは知っているが、これは母が5年前に私に言ったことだ』と言われればそれまでだ」とドラン所長は語った。
 教皇の教義解釈は神学者を驚かせた。「異常な療法を用いる義務は全くないと言う伝統は、少なくとも1500年代にさかのぼる」として、最近の教会の教説は、患者の改善される状況とは不釣り合いなほどに家族や共同体に負担がかかるのなら、治療を止めるべきだとしていた、とシャノン教授は指摘している。
 ノースウェスタン大学医学部のローリー・ゾロス教授は、連邦議会の介入は個々の家族の決定への見当違いの押し付けだとして、植物状態の患者の回復のかすかな可能性を強調すると、誤った希望が生まれ、それでなくえも壊れやすい医師と患者の関係が脅かされるかもしれない、と言う。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2005/03/28