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現実無視した宗教間対話は失敗、とイスラム教学者

 【ジュネーブ=ENI・CJC】人生の厳しい現実を取り扱わない陳腐な宗教間対話は失敗する、と欧州の著名なイスラム教学者タリク・ラマダン博士が、6月7〜9日にジュネーブでWCC(世界教会協議会)が主催して開かれた「宗教間対話の危機」に関する国際会議で指摘した。「ここで互いを信頼することは簡単だが、日常生活ではそう行かない」と言う。
 ラマダン氏は昨年、米ノートルダム大学(カトリック系)クロック平和研究所に、イスラム哲学と倫理を教えるように招かれたが、渡米直前に、米政府は国家安全を理由にビザを取り消した。
 「すべての宗教社会にとって現在は危機的な状況と判断出来る。キリスト教とイスラム教では不信と疑念が双方にある。双方が接触する時は、いつも普遍的なメッセージ宣言の競り合いから始まる」とラマダン氏は語った。
 ジュネーブでの会議は、宗教間の対話を越えて協働を探ろうとしたもので、それには対話の文化を助長する新たな教育、訓練、交流を含まれていた。
 象徴的な活動として、行動継続のため、歴史の記憶の癒し、新たな組織やネットワークが提唱された。
 WCCのサミュエル・コビア総幹事は「この会議は、私たちが対話を越えて、異教徒間の、また多宗教の協働という段階に進むことに役立つ」と語った。
 これに対しラマダン氏は「このような会議に集まる人々は『ナイーブ』だ」と言い、相互信頼の場を広げるために、それぞれの領域で難局に立ち向かう「批判的な心」を打ち立てなければならない、と指摘した。
 ウエブサイト『イスラム・オンライン』で発言しているエジプトの政治学者ヘバ・ラウーフ・エザット博士も、信仰に回帰する人は増えているが、必ずしも組織化された制度的な宗教に戻るわけではない、と指摘する。「真の抗争は文明間や宗教の間にあるのではなく、人間性と反人間性との間に存在する」と言う。
 すべての人が一般的な人間の在り方を共有し、宗教の役割は、礼儀正しさを敵視する時代にあって「それを保持して、伸ばし、確かなものにする」ことなのだ。
 同氏は、すべての信仰が一般的価値を共有し、伝統的価値を強調することでは同じ状況にある、と指摘した。
 エザット氏は、改宗を否定することでは他のスピーカーと同意見だった。
 会議運営責任者のハンス・ウッコ牧師は「会議が、対話を評価しようとし、より現実的で、また理想主義的でない関係を進展させる方法を探った点でユニークだった。関係者の関わりを確認したが、これは対話に対する私たちキリスト者の取り組みに刺激を与える」と言う。□

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