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教皇が伊大統領訪問、両者の立場の違い明確に

 【ローマ=CJC】カトリック教会では洗礼者聖ヨハネの誕生を記念した6月24日、教皇ベネディクト十六世は、4月の教皇就任以来初めて、イタリアのカルロ・アゼリオ・チャンピ大統領を大統領官邸クイリナーレ宮殿に訪問した。
 チャンピ大統領自身の招きに応えるもので、教皇着座後5月3日の同大統領のバチカン(ローマ教皇庁)訪問への返礼ともなるもの。大統領は、以前教皇ヨハネ・パウロ二世を、イタリアの保護聖人の1人であるシエナの聖カタリナの祝日4月29日に大統領官邸に招待していたが、同教皇の逝去によってこの約束は果たされなかった。
 教皇は出発前にバチカン市国とイタリアの境界線にあるピオ十二世広場で、フィーニ外相を始めとするイタリア政府の使節団に迎えられた。
 大統領官邸に到着した教皇はチャンピ大統領の出迎えを受け、続いてコシガ、スカルファロ両元大統領やベルルスコーニ首相らとも挨拶を交わした。
 30分以上にわたる会談で、チャンピ大統領は、イタリア憲法の条文を引用しながら「国家と宗教の分離」を強調した。
 教皇はこれに対し「国家の世俗性は健全なものだが、倫理面で宗教の基準を仰ぐことを除外すべきではない」と述べ、「国家が避けられない課題」として生命倫理などを指摘した。
 不妊治療法改正を巡る国民投票で、バチカンが棄権を呼びかけて不成立に持ち込んだ「政治介入」が議論となる中、両者の立場の違いが明確になった形だ。
 バチカン放送によると、大統領との個人会談後、教皇は祝祭の間に集った政府要人らを前に、大統領への公式の挨拶を読み上げた。
 この中で教皇は、イタリアとカトリック教会の独立した関係に敬意を示した上で、これからも教会は同国における精神的・倫理的成長に対する協力と奉仕を惜しまない旨を述べた。
 また教皇は、イタリアが歴史・文化の根底にあるキリスト教の遺産を守り、キリスト教精神の源泉を再発見しつつ、欧州の一致に貢献することを希望すると共に、家族・命、そして教育の権利の擁護を強調した。
 約2時間半の訪問を終えた教皇は、再びローマ市内を通り、バチカンに戻った。
 クイリナーレ宮殿は、ローマの七つの丘の一つ、クイリナーレの丘の上に位置する。古代には神殿や公共建築群が多く見られた。16世紀、ぶどう園の上に建っていたカラファ邸は、教皇シスト五世が夏の離宮とし、17世紀初頭、パウロ五世によって現在の宮殿の原型が作られた。
 同宮殿は1582年から1870年まで歴代教皇によって使用され、ローマがイタリア王国に併合されてからは国王一家の王宮、共和国成立後には大統領官邸となった。□

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