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バチカンの情報管理は粗雑だったか、テロの弔電2回流れる

 【CJC=東京】ロンドンの同時多発テロに際し、バチカン(ローマ教皇庁)はすぐさま教皇ベネディクト十六世の弔電を発表したが、その文言の変転がイタリアでは大きな話題となった。バチカンの情報管理が粗雑だったのではないか、というもの。
 電文は当初イタリアの有力通信社『ANSA』が7月7日昼過ぎ流した時には、教皇がロンドンの攻撃を「反人間的、反キリスト教的」と指摘したようだった。イタリアの各通信社もこれに続いた。
 「反キリスト教」と言えば、イスラム教過激派とキリスト教西欧との間の「文明の衝突」という意味合いをもたらし、イスラム教に対するバチカンの強硬姿勢を暗示するかのようで、テロの宗教的要因を明言したことになる。
 しかしバチカン報道事務所が午後2時33分に公表した電文ではそれが「人類に対する野蛮な行為」に変わっていた。通信社は公表電文をそのまま報じたものの、前の報道を訂正はしなかった。そのため記者たちは「反キリスト教」に力を入れて記事を書き続け、翌8日のイタリア各紙には教皇の刺激的な言動への批判が一斉に掲載されることになった。
 外国通信社は慎重だったのか、ほとんどが公表を待って報じた。ただ米国の統一教会系とされるUPI通信は「反キリスト教」とした記事を流したようだ。
 9日、土曜日にもかかわらず、バチカンのホアキン・ナヴァロ=ヴァルス報道担当は、教皇にはテロ攻撃に「反キリスト教」という言葉を使う意図は全くなかったとして、ANSA通信に釈明を求める書簡を送った、と語った。
 ただ米国のカトリック誌『ナショナル・カトリック・レポーター』は、バチカンのある高位聖職者の話として、「反人間的、反キリスト教的」という言葉が国務長官アンジェロ・ソダーノ枢機卿の用意した草案には入っていた、と報じている。教皇の目を通す前に、国務省サイドから草案がANSA通信に渡ったと考えられる。そうならANSA通信が確実なものとして流して不思議はない。ただ結果として、教皇がそう言わなかったのだから、ANSAは誤報したことになる。
 イタリア国営放送『RAI−2』は8日夕のニュース番組でANSAを名指しはしなかったが、草稿を流したことを「信じられないジャーナリズムの失態」と指摘した。
 その高位聖職者は「ソダーノ枢機卿は好人物だが、コミュニケーションとか、言葉遣いが世論に与える影響といったことをまるで分かっていない」と言う。確かにこの2月、故教皇ヨハネ・パウロ二世が引退するのでは、と問われた時にも「教皇を信頼しなければならない。彼はどうしたら良いかわかっている」という答え方をしたので、引退説が世界を駆けめぐった。
 教皇にとって今回の事態は不運と言っても良い。実は草案も教皇の手になるもので、一切をソダーノ枢機卿が背負ったとの見方も出来る。いずれにしてもバチカンの内幕が簡単に明かされることはない。ただバチカンの広報体制が、このような粗雑なものであってはならず、直接の責任部局である広報評議会(議長ジョン・フォーリー大司教)の改組など具体策が打ち出されることが予想される。□

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