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教皇が初外遊で母国ドイツへ=『世界青年の日』参加

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は8月18日、カトリック教会の催し『第20回世界青年の日』大会出席のため、ドイツのケルンを訪問した。イタリア除けば、4月の教皇職開始後、初めての外国訪問。
 空港にはホルスト・ケーラー大統領やゲアハルト・シュレーダー首相が出迎えた。教皇は、前教皇の外国訪問時には恒例だった大地へのキスはしなかった。
 教皇は空港での歓迎式で、「若い人たちの間にいて、その信仰を支え希望を育むことのしあわせ」を述べると同時に、また「自分も青年たちから未来に臨むための何かを、特にその熱心さ、繊細さ、自由な精神を受取るものと確信している」と期待を表明した。

《青年たちとライン川の遊覧船で最初の交流》

 教皇は18日夕、5大陸を代表する青年たちのグループと大型の遊覧船に乗り、ライン川を約10キロ走行しながら、青年たちとの最初の交流の時を持った。ケルン市内の川岸では何万という参加者らが手や国旗を振り教皇を歓迎した。甲板で教皇も立ち上がり、身を乗り出すようにして歓迎に答えた。
 司教座大聖堂に近いはしけから教皇は専用車で大聖堂を訪問、内部に保管されている『東方三博士の聖遺物』の前で祈りを捧げた。『東方三博士』は、新共同訳聖書では、星を追ってベツレヘムへ行き幼子イエスを礼拝した『占星術の学者』として知られる。今回の『世界青年の日』は、彼らの言葉から「わたしたちはイエスを拝みに来たのです」(マタイによる福音書2・2)をテーマに掲げている。
 この後、教皇は大聖堂前を埋め尽くした『世界青年の日』参加者や教皇を歓迎する一般市民に挨拶した。
 教皇はケルンと『東方三博士』の結びつきを強調、さらに同市にゆかりの深い聖人たちの名を次々に挙げ、ケルンに今日も息づく豊かなキリスト教の歴史と遺産を示し、「今日こうして教会の普遍の息吹を生きていくのはあなたたち」と、言葉を青年たちに向け、「新しい聖霊降臨が皆さんの心を新たにするよう、聖霊の火を燃え上がらせなさい」と呼び掛けた。

《『ホロコ−スト』の犠牲者追悼式典に参加》

 教皇は19日、ケルン中心部のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)を訪れ、ユダヤ教社会の代表らとナチス時代に『ホロコ−スト』(ユダヤ人大虐殺)の犠牲者追悼式典に参加した。教皇がシナゴーグを訪れるのは故教皇ヨハネ・パウロ二世に続き2人目。
 教皇は演説で「カトリック教会はすべての人種、文化、宗教に対する寛容と尊敬を守る立場」にあるとして、近年、新たな反ユダヤの動きが出てきていると指摘した上で、ヨハネ・パウロ二世が目指したキリスト教とユダヤ教の和解を引き続き進めると強調した。そして、ナチスによる『ホロコ−スト』を「信じられない犯罪」と非難、犠牲者に祈りを捧げた。
 ドイツ出身で、かつてナチスの少年団体『ヒトラー・ユーゲント』に参加していたとされる教皇への不信感がユダヤ人社会から表明されたこともあり、今回のシナゴーグ訪問もユダヤ人との和解を意識してのものと見られる。
 シナゴーグは1938年にナチスによるユダヤ人迫害の際に破壊され、50年代に再建された。

《キリスト者の一致は教皇の務めの優先的な課題》

 教皇は19日、ケルンの司教館で各派代表と会見、キリスト者の一致が教皇の務めの中で優先的な課題だ、と語った。
 発言の中で教皇は、ここ数十年間のエキュメニズム(キリスト教一致)の全ての段階について言及、「この時代の大きな倫理的課題」への普遍的な応答を共にするよう呼びかけた。「この領域では、キリスト者の側の普遍的な応答がしばしば用意されると、最近の研究が正確に予測していることを神に感謝する。ただいつもではないのが残念だ」と言う。
 教皇は、特定の問題に言及はしなかったが、多くの国々が生命、妊娠中絶、幹細胞利用、胎児の重要性、家族、内縁関係などについて異なった観点を持っていることは明らか。
 「これらの領域で相容れない立場のために、私たちが信仰者と社会に負っている福音と倫理的指針は、影響力を失い、しばしばあいまい過ぎるように見え、その結果、私たちは今必要とされている証しを示すという義務を果たせないでいる。私たちの分裂はイエスの意志に合わず、現代人の期待を裏切っている」と、教皇は語った。

《テロとの戦いでイスラム教とキリスト教が協力を》

 教皇は20日、イスラム教指導者らと会談し、若い世代を正しく導く「重大な責任」があると強調したうえで、テロを非情で狂信的だと厳しく非難するとともに、「心の中にある不寛容を取り除き、暴力に反対していくために我々は協力すべきだ」として、テロとの戦いでイスラム教とキリスト教が協力するべきだとの考えを明らかにした。ドイツのイスラム教徒は西欧では最大規模の350万人前後で、指導者の大半はトルコ系。
 教皇はトルコ・イスラム同盟のリドバン・チャクル会長らに「宗教を憎悪に利用する狂信的勢力」と闘う義務があると促し、宗教界が協力しなければ「新たな暗黒時代」を招くと強調した。
 教皇は「テロ行為は世界各地で後を断たず、死と破壊を撒き散らしながら、われわれの兄弟姉妹を深い悲しみと絶望を陥れている」と述べるとともに、テロ首謀者らが平和的かつ公正な共存に向けた試みに対抗するため、宗教を含めたあらゆる手段を使っている、と指摘した。
 教皇はこれまでテロとイスラム教の関連づけに慎重姿勢を示していたが、教皇はこの日、世界が「蛮行による暗黒」にさらされていると警告したり、イスラム教指導者の責任を指摘するなど、踏み込んだ発言をした。
 会談後、ドイツ・イスラム教徒中央会議のナデーム・エリヤス議長は「テロと闘うためキリスト教とイスラム教の対話フォーラムを設置する考えで合意できた」と述べ、フォーラム実現を目指し協力を進めることを明らかにした。
 教皇は同日夜、ケルン近郊のマリエンフェルトで約70万人の巡礼者にミサを行なった。

《次回大会は、2008年シドニーで》

 教皇は21日、近郊の露天掘り炭鉱の跡地で行われた、締めくくりの野外ミサで「世界的な暴力の連鎖を断ち切らなければならない」「憎悪と暴力を愛に変えよう」「宗教は商品ではない。自分の好きな部分だけ取り入れてはならない」などと呼び掛けた。広大な敷地を埋め尽くした青年始め100万人以上が教皇を大歓声で迎えた。
 教皇は、次回の『世界青年の日』大会を2008年にシドニーで行なうことを公式に発表した。
 これまでの国際大会開催地は、ブエノスアイレス(1987)、サンティアゴデコンポステラ(89)、チェストコワ(91)、デンバー(93)、マニラ(95)、パリ(97)、ローマ(2000)、トロント(02)、ケルン(05)で、08年シドニーは初のオセアニアでの大会となる。
 教皇は同日午後、バチカンに帰った。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2005/08/22