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ロバートソン牧師、「暗殺」発言取り消す

 【CJC=東京】米キリスト教保守派の有力指導者パット・ロバートソン牧師(75)が8月22日、自らが運営する『クリスチャン放送網』(CBN)の番組で、米国との対立が深刻化しているベネズエラのチャベス大統領を暗殺すべきだと主張した。
 同氏は1988年の共和党大統領予備選に出馬した経験があり、昨年のブッシュ大統領再選の原動力になった宗教右派の代表的人物の1人。全米で数百万人のメンバーがいるとされるキリスト教保守派の団体『クリスチャン連合』の創設者でもあり、ブッシュ政権にも影響力を持つと見られている。
 同氏は番組『700クラブ』で、チャベス大統領を「共産主義とイスラム原理主義をアメリカ大陸に広めている」などと批判した上で、チャベス氏が繰り返し言及してきた「米国によるチャベス暗殺計画」に触れ、「もしそれが本当なら、我々は暗殺を実行すべきだ」「独裁者を始末するのに(イラクのように)2000億ドル(約22兆円)を使って戦争をやる必要はない。秘密工作員に仕事をやってもらう方がずっと楽だ」発言、暗殺には情報機関の数人の活動で十分と述べた。
 ベネズエラのランヘル副大統領は23日の会見で「米国は対テロ戦争を説く一方、このような影響力のある人物にテロリスト的発言を許している。偽善ではないか」「この発言は明らかな犯罪だ」と米国に対処を求めた。
 これに対しマコーマック米国務省報道官は同日、「不適切な発言だが、米政府の政策ではない」、と一市民の発言だと強調した。
 同氏の発言は、予想以上に波紋を広げ、24日、チャベス大統領を暗殺すべきだとは文脈を無視して受け取られたもの、と釈明いたが、結局は発言を撤回、謝罪した。
 同氏は24日まず「発言が誤解された」と釈明したものの、結局声明を発表し、「暗殺を呼びかけることは正しいことだろうか? ノーだ。私は謝罪する」と述べた。同氏は「(反米的な)男とうまくやらねばならないといういら立ちから出た言葉だ」と強調。その一方で、イラクのフセイン元大統領やヒトラーを引き合いに「無実の傍観者の群れに車が突っ込もうとしているなら、ただ惨劇を待つことはできない。ドライバーからハンドルを奪い取らねばならない」と比ゆし、チャベス大統領を改めて批判した。
 チャベス大統領はしばしば、米国が政権転覆や自分に対する暗殺を計画していると公言、同師は声明で「そんな人物を受け入れなければならないのかといら立ち、話してしまった」と弁解した。
 南米最大の産油国ベネズエラは、アメリカにとって原油の主要な輸入国だが、チャベス氏は南米で最も目立つ反米主義者で、米州自由貿易構想をはじめ、イラク戦争のほか、米国の政策にことごとく反発、さらにこのところ一段と反米姿勢を強めていることから、今回のロバートソン氏の発言は、チャベス政権に対するアメリカ国内の保守派の苛立ちを示したものと受け止められている。
 米教会協議会のロバート・エドガー総幹事は「驚くほどの不信感」と指摘、「この自称キリスト教指導者が、イエスの敵を愛し、暴力に自らのほおを差し出せとの教えを、こんなに軽率に捨てられるとは論外だ」と述べた。
 ワシントンに本拠を置く『全国聖職者協議会』のロブ・シェンク議長は「ロバートソン氏を高く評価していたが、今回の発言はどう見ても軽率であり、倫理的な一線を越えた。ロバートソン氏はすぐにも謝罪し、発言を撤回し、人間乗せ生命を奪うことに関する聖書とキリスト教の教えを明確に示すべきだ」と語った。
 同氏は福音教会連盟の牧師。ロバートソン氏の活動に密接に協力して来た。
 一方、ベネズエラ福音連盟のサム・オルソン議長は発言に対して、ラテンアメリカ(中南米)の福音派キリスト者のために「自制」を強調した。
 世界福音連盟(WEA)も、全ての人、特にベネズエラの人に、このような発言は世界中の福音派キリスト者数億人のものではなく、単なる個人的な意見だとして、自制を呼びかけた。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2005-08-29T22:28:00+09:00