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教皇、「反体制」神学者キュンク神父と会見

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、ローマ郊外のカステルガンドルフォで9月24日、「反体制」神学者として知られるハンス・キュンク神父と会見した。
 キュンク神父は1928年スイス生まれ。第二バチカン公会議に神学顧問として参加。その後、独チュービンゲン大学神学部教授となった。教皇も1966〜69年に同大学で教鞭をとっている。
 キュンク神父は、教皇不可謬やキリストの処女降誕などに関して議論を提起するなど、カトリック教会の教義から逸脱したとして79年にはカトリック神学を講じる資格を剥奪されている。また諸宗教の対話・協力に貢献すると共に、平和実現に向けて「地球倫理」を提唱したことで知られ、今年『第22回庭野平和賞』を受賞している。
 バチカンのナヴァロ=ヴァルス広報担当が26日明らかにしたところでは、教皇とキュンク神父双方とも、教義に関する議論には立ち入らない同意のもと、話題は主に同神父の最近注目される仕事、地球倫理の問題と、自然科学とキリスト教信仰の対話に集中した。
 バチカン放送(日本語、電子版)によると、キュンク神父は、彼の地球倫理は主知的な抽象概念ではなく、むしろ世界の主要宗教が、そのすべての違いにも関わらず向う倫理価値に光を当てるものであり、世俗的理性の基準からも知覚可能なものと強調した。
 教皇は、キュンク神父が諸宗教との対話と世俗的理性との出会いを通して、人類の本質的倫理価値の新たな確認に貢献していることを評価、人間の生を支える価値の新たな認識への取り組みは、自身の教皇職の重要な目標の一つであると強調した、という。
 キュンク神父は会見後、独紙『ズュートドイチェ・ツァイトゥング』に教皇との会見は「希望の徴」だと語った。
 第二バチカン公会議による改革路線に反対してマルセル・ルフェーブル大司教が設立した『聖ピオ十世会』は1976年に教皇ヨハネ・パウロ二世によって破門されたが、この8月に教皇ベネディクト十六世はその指導者ベルナール・フェライ司教と会見しており、イタリアのメディアは、バチカン(ローマ教皇庁)の教義への反対者との対話に乗り出した教皇の姿勢を歓迎している。
 ミラノの『コリエーレ・デラセーラ』紙は「フエライ司教やキュンク神父との会見で何かが解決されはしないものの、前教皇が四半世紀にわたって凍結していた反体制派との関係和解が始まった」と指摘している。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2005-10-03T22:57:14+09:00