【CJC=東京】生命の誕生には何らかの知的計画が関与したとする「インテリジェント・デザイン」(知的計画)を授業で教えようとする動きが米国で出ている。これまで米国では、進化論支持者と、旧約聖書創世記にあるように神が天地を創造されたとする天地創造説支持者の対立が続いてきた。
市民の過半数が創造説を信じているという世論調査もある米国では、公立学校で「創造論」を教えることの是非が問われてきたが、憲法には政教分離原則が盛り込まれており、1987年に最高裁が「聖書の創世記を授業で教えることは、政教分離に反する」と判断して以来、公立学校で「生命は神がつくった」とは教えられない。
そこへ出て来たのが「インテリジェント・デザイン」で、ダーウィンの「進化論」では生命誕生のなぞに答えられないとして、「時間をかけたからといって、複雑な生物は生まれ得ない」「より高度な『力』が、生物を創造した」など、生物が誕生して固有の形をもつようになった背景に何らかの知的計画があると主張する。「神」や「創世記」といった言葉を用いてはいないものの、進化論支持派は、「インテリジェント・デザイン」について天地創造説の「神」を「知的計画」に置き換えただけだと批判している。
11月8日、東部ペンシルベニア州と中部カンザス州でこの問題に関して、相反する決定がなされた。
ペンシルベニア州南部の町ドーバーでは、教育委員会の選挙で「インテリジェント・デザイン」を支持する8人が落選した。
昨年、生物の授業で「進化論には『穴』があり、「インテリジェント・デザイン」は穴を埋める理論の一つだ」とする文書を教師が読み上げることを学校区委員が決めた。これが政教分離原則に反するとして法廷論争が続いている中でのこと。
一方、カンザス州の教育委員会は8日、公立学校を対象とした「生命誕生をめぐる科学的な論争」を教えるとするカリキュラム改訂案を賛成6、反対4で可決した。直接言及していないが、授業で進化論だけでなく「インテリジェント・デザイン」にも触れることを示している。
指針は変更されたが、「インテリジェント・デザイン」を授業に取り入れるかどうかは、各学校の判断に委ねられる。しかし地域によっては導入圧力がかかることは避けられないと見られている。□