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ムハンマドの諷刺漫画掲載への非難と抗議収まらず

 【CJC=東京】イスラム教の開祖ムハンマドの姿を描いた諷刺漫画を昨年、デンマークの保守系高級紙『ユランズ・ポステン』(ユトランド新聞、約14万部)が掲載したことへの非難と抗議運動がイスラム圏各地に広がっている。
 発端はイスラムと欧州の「統合」を目指す児童書の出版だったという。デンマーク人作家が昨夏、ムハンマドの生涯を子供に教える本の挿絵画家を探したが、イスラム教が偶像崇拝を禁じていることから、候補にのぼった複数の画家は過激派の襲撃を恐れて仕事を断ったり、匿名を条件にした。このいきさつを地元通信社が報じた。これに同紙のフレミング・ローズ文化面担当デスクが風刺画掲載を思いついた。挿絵を描こうとする画家がいないので困るという内容の投書があった、との報道もある。
 同紙は「ムハンマドの顔」を公募し、9月30日付の週末特集面に「ムハンマドの顔」12作品を掲載した。その中に爆弾型ターバンを巻いたムハンマドの画があった。
 デンマークでは極右政党による反イスラム宣伝が強まっており、その中での掲載はイスラム教徒の感情を軽視したもの、と10月14日にコペンハーゲンで抗議デモが行われた。イスラム圏諸国も反発し外交問題に発展、リビア、サウジアラビア、シリアの在デンマーク大使は本国に召還され、イスラム諸国でデンマーク製品の不買運動が始まった。コペンハーゲンでは2月5日にも「平和的対話」を求める市民のデモが行われた。
 同紙は1月30日に謝罪・釈明したが、掲載そのものに関しては、表現の自由の面から重要であった、という主張を変えていない。ただ同紙は2003年にキリストの風刺画の掲載を拒否していた事も明らかになった。「(教会など社会の)指導者層を攻撃することになる」ため掲載を拒否したという。
 9日付の独紙フランクフルター・アルゲマイネは、作者の1人が「だれも傷つける意図はなかった。小さな絵から異常な状況に発展した。宗教でなく政治が問題になり始めた。暴動は全く予想していなかった」と反省していることを伝えた。
 ローズ文化面担当デスクが長期の自宅待機に入ったことが10日明らかになった。同デスクは、イスラム教に関する話題に対する自己規制の傾向を試すために掲載した、と語っている。カルステン・ユスト編集局長にも辞職圧力がある、という。同局長は、ローズ氏の休職についてイスラム教徒やマスコミの「圧力」に疲れたことを理由に挙げたが、漫画掲載を正当化してきたデスクに自制を促す狙いもあるとみられる。
 イスラム圏諸国大使との会談を拒んでいたアナス・フォー・ラスムセン首相も「諷刺画の掲載は不適切だった」と認めるなど事態の沈静化を図った。ただ同首相は国としての謝罪は拒んでいる。
 シリアのダマスカスでは4日、デンマーク、ノルウェー大使館が放火された。アサド政権があえて阻止しなかったとの見方が一般的だ。ベイルートで5日起きたデンマーク総領事館放火でも逮捕された約330人の半数以上がシリア人やパレスチナ人だった。
 パレスチナ自治区ガザ地区では、抗議デモをパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ系の武装組織が先導している。1月25日のパレスチナ評議会選挙で大勝したイスラム原理主義組織ハマスへの対抗意識があるとみられる。
 加盟国が暴徒の標的となった欧州連合(EU)はアラブ・イスラム諸国との対話を通じての事態沈静化に力を入れている。北大西洋条約機構(NATO)は10日、イタリア南部タオルミナで開いた非公式国防相会議に、エジプトなど中東、北アフリカの7カ国の国防相らを招き、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画をめぐる混乱についての対応策を話し合った。NATOのデホープスヘッフェル事務総長は「難しい状況にかかわらず、対話と信頼を共有したい」と事態の沈静化を働きかけた。
 デンマーク外務省は12日までに、イラン、インドネシア、シリアの3大使館から大使らを国外退避させたことを明らかにした。またパリでは11日、約7200人のイスラム教徒がデモ行進。東部ストラスブールでも約2200人が抗議デモを行ったが、いずれも暴力的行為はみられなかった。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2006-02-13T22:53:55+09:00