【CJC=東京】17年前にオーストリアでの講演でナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を否定したとして、同国で逮捕、起訴された英国人の歴史学者デビッド・アービング被告(67)にウィーンの裁判所は2月20日、禁固3年の有罪判決を言い渡した。
同被告は「アウシュビッツ(強制収容所)にガス室がなかったと話したのは誤りだった」と述べたが、裁判官は「考えが本当に変わったとは認められない」と判決理由を述べた。同被告は判決は「ショックだ」と述べ、控訴する意向。
オーストリアやドイツでは、ホロコースト否定は法律で禁じられている。オーストリア連邦法は、公の場でホロコーストを否定したり正当化したりする行為を禁止している。
「ヒトラーの戦争」などの著作があるアービング被告は1989年、ウィーンとレオベンで「アウシュビッツ(強制収容所)にガス室はなかった」などと演説したことから、オーストリア当局が逮捕状を出していた。同被告は昨年11月に講演のため同国を訪れた際に逮捕された。
AP通信によると、同被告は1992年、ドイツでもホロコースト否定の罪で6000ドル相当(約71万円)の罰金刑を受けている。
イランのアハマディネジャド大統領がホロコーストを否定して国際社会の批判を招き、イスラム教開祖ムハンマドの風刺漫画問題をめぐり世界各地でイスラム教徒の抗議行動が続く中、表現の自由のあり方が問い直されており、今回の判決は言論の自由をめぐる議論に新たな一石を投じている。□