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「ユダの福音書」でキリスト教の基盤は揺るがず=カトリック神学者

 【CJC=東京】米ナショナル・ジオグラフィック協会が刊行を発表した「ユダの福音書」について、カトリック通信『ZENIT』がローマのレジナ・アポストロールム大学神学部長のトーマス・D・ウィリアムズ神父にコメントを求めた。
 「ユダの福音書」とは何か、との問いに同氏は次のように指摘している。
 真正なものか判定が必要だが、おそらく4、5世紀のもので「カイン派」と呼ばれたグノーシスの1派により書かれたものの写本だろう。リヨンの聖エイレナイオスが180年ごろに書いた『異端反駁』の中で触れているユダの福音書の写本と思われる。
 真正なものだとしても、これでキリスト教の基盤が揺らぐということではない。グノーシス派の福音書は他にもあり、それらはキリスト教と他の宗教を混交させたものだ。それらが出現して以来、教会はキリスト教信仰と相容れないとして排除して来た。
 「ユダの福音書」も同種類のもので、グノーシス派に関する知識を増やすという点では歴史的価値は大きいにしても、キリスト教に対する挑戦といったものではない。
 教会がユダの福音書などいわゆる外典を隠そうとしている、という意見は、ダン・ブラウンなど陰謀説を唱える人が流している神話だ。カトリック書店でもグノーシス派の福音書を見つけることは可能だ。キリスト者は、それらを真理と信じないが、隠す必要もない。
 グノーシスは2世紀の中頃に発生したもので、「ユダの福音書」が真正なものだとしても2世紀半ば以降に成立したものだ。共観福音書と異なり、イエスに関する直接の証言を元にしたとは見られない。
 「ユダの福音書」はユダの裏切りが神の計画の必要な部分だと主張しているが、全知の神は、私たちがどんな選択をするかを完全に知って、世界のためにその計画に私たちの悪の決断さえ織りこまれる。
 故教皇ヨハネ・パウロ二世は、人間が作り出せた最も悪い弊害からさえ、神は良いものをもたらし続けることを力強く指摘した。ただそれは、神が私たちに悪をなさせようとか、ユダにイエスを裏切らせようとしたという意味ではない。ユダでなければ他の誰かであったろう。当局は、イエスを殺すと既に決めており、それはただ時間の問題だった。
 地獄に落ちるのが当然なら、それはユダでないか、と問われる。確かに地獄に行くのが当然な人も多くいるが、神の恩寵は私たちの悪よりはるかに大きいことを覚えていなければならない。
 ユダにはこれまでも様々な見方がされて来た。1973年の「ジーザス・クライスト・スーパースター」を思い出すだけでもよい。「ダビンチ・コード」もそれで人気を集めたことは確かだ。 
 福音書ではイエスが水の上を歩いたと書かれていることについて、最近発表された「科学的な」研究では、イエスが当時の気象条件下では実際には氷の上を歩いたと断言している。
 奇跡が起こりえることを完全に否定する人々は、キリスト教の主張に関し、風変わりな説でも切り札として出してくるのだ。

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2006-04-13T22:31:49+09:00