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米聖公会、世界聖公会共同体内での孤立化が際立つ

 【CJC=東京】「共生」とは「平等」という言葉自体は教会に受け入れられるが、それが聖職者のこととなると、問題は簡単ではない。女性を聖職として認めない教会はカトリック、正教会はむろんのこと、プロテスタントの中にも多い。同性愛者となると、さらに複雑になる。
 英国国教会を「親教会」とする世界聖公会共同体(アングリカン・コミュニオン=信徒数7700万人)に属する各国聖公会の中では、1971年に香港聖公会が初めて女性聖職を認めて以来、論議が交わされて来た中で、米聖公会(信徒数220万人)は76年の総会で女性叙階を容認、2003年にはニューハンプシャー教区が同性愛者であることを公然化したジーン・ロビンソン司祭を主教に選任、さらにこの6月オハイオ州コロンバスで行われた総会で、新指導者・総裁主教にネヴァダ教区のカタリン・ジェファート・ショリ主教(52)を選出した。同派初めての女性指導者の登場となった。
 総会最終日の21日、これ以上同性愛聖職者を選任しないよう「自制」を求める決議が行われたにも関わらず、ニューアーク、ニュージャージーの2教区が、主教候補に公然同性愛者を考えていることを明らかにした。ニューアーク教区は9月23日に主教を選出する。
 これらの動きに聖公会保守派指導者は、忍耐も限界だとして、総会直後に離脱を表明した。全110教区の中で5教区が、総会で選出されたショリ新総裁主教への不満を露わにしている。ショリ氏が同性愛者のロビンソン主教を支持したことが理由。セントラルフロリダ教区は、不満の理由として、同性愛主教支持に加え、新総裁主教が選出直後の説教で「イエス、私たちの母」と呼んだことも挙げ、声明で「私たちは、癒しと回復の途上にある聖公会を導く能力に疑問を抱いている」と指摘した。
 セントラルフロリダ、ピッツバーグ、サウスカロライナ、フォートワース、カリフォルニア州サンホアキンの各教区は、米国以外の聖公会主教の配下に入ることを要求している。
 サンホアキン教区とフォートワース教区は今なお、女性叙階も認めていない。
 ロビンソン主教叙階以後、それに反対する10教区約800教会は『アングリカン・コミュニオン・ネットワーク』を結成したが、今回の5教区はいずれも加盟している。
 世界聖公会共同体は、米聖公会を投票権のない準会員扱いにすることを27日にロンドンで発表した。カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムス氏は、同性愛に関し英国国教会主義の伝統的な姿勢を確認する誓約書に署名する教会が正会員であり、その他の教会は準会員に格下げされる、と語った。
 米聖公会のフランク・グリズウォルド総裁主教は、取り扱いが英国国教会派の「予期されない問題に急いで決着をつけない感覚と知的な柔軟性という感性」を反映することを期待する、と語った。しかしウィリアムス大主教は「現在起きていることから、世界聖公会共同体が変革されないままではすまない」と指摘した。
 世界聖公会共同体は38の地域管区で構成されているが、同性愛を罪と考える「正統派」が多い。米聖公会の中でバージニア州のフォールズ教会とトゥルーロ教会、テキサス州プラノのキリスト教会は、聖公会脱退をほのめかしている。3教会の毎日曜礼拝(聖餐式)出席者の合計は、ショリ総裁主教が2001年以来主教の職にあったネバダ教区の全信徒数をしのいでいる。
 6月28日、バージニア州フェアファックスのトゥルーロ教会マーティン・ミンズ司祭がナイジェリア聖公会によって主教に任命された。ミンズ主教は北米各地のナイジェリア移民の多い20教会などで構成される北米アングリカン主教会を監督すると見られている。ミンズ氏はナイジェリアのピーター・アキノラ大主教と親しいが、同大主教はロビンソン主教叙階を「神の教会への悪魔的な攻撃」になぞらえている。
 ただナイジェリア教会の主教としてのミンズ司祭選出が「聖公会の管区独立という伝統的、正統理解への侮辱」であり、ミンズ氏がナイジェリア聖公会の主教としての役目を果たす一方でトルロー教会牧師のままで残るというアキノラ大主教の主張を受け入れることは不可能だ、との批判もある。
 昨年、アキノラ大主教は「ナイジェリア教会の意図は米国やカナダの教会組織の問題に介入しようというのではなく、自らの教会には魂のやすらぐ場所がなくなった人たちに安息場所を提供しようというものだ」と指摘した。しかしナイジェリア聖公会は7月4日、米国教会を「癌の塊」と呼び、世界聖公会共同体から排除すべきだ、との声明を発表している。
 一方でショリ総裁主教選出を称賛する向きもある。ノーベル平和賞受賞者、南アフリカのデズモンド・ツツ引退大主教はニューヨークのトリニティ教会でのインタビューで、宣教の場への女性進出を「ぞくぞくするほど素晴らしい。深く感謝する」と語り、聖公会共同体内で進められている和解への努力に影響するか尋ねられると、「この特別の贈り物を世界に与えたいと思うとなぜ言えないのか。私たちに違いはあるが、それがどうした」と述べた。
 総会決定に対し、意見の異なる教区や教会が離脱出来るのか、米聖公会コミュニケーション担当のジャン・ナンリー氏は、公式に「離脱」することは出来ないと言う。「小教区(各個教会)は教区によって創設される、教区は総会によって創設される。個人が離脱するのは自由だが、教区や小教区は聖公会の中に存続し続ける」と語った。
 同氏は、聖公会当局が教区主教が空席であると宣言出来、そして総裁主教が新主教の選挙を指示することになる、と言う。□

KIRISUTO.INFOホーム教界ニュースホーム Last Update : 2006-08-22T02:59:29+09:00