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教皇発言にイスラム圏の反発続く

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世が9月12日、ドイツでの演説の際、聖戦で信仰を広めるイスラムの教えは「邪悪で残酷」と評したビザンチン(東ローマ)帝国皇帝の発言を引用、「原理主義は(イスラム教預言者)ムハンマドの教えに反する」として、テロを行うイスラム原理主義者の宗教的根拠を否定した。
 これをイスラム教の「ジハード(聖戦)」を批判したと受け取ったイスラム諸国から謝罪要求や抗議が続発した。
 またヨルダン川西岸のパレスチナ自治区でキリスト教会に火炎瓶が投げ込まれるなどの事件があったが、「一神教のライオン」を名乗るグループは、教皇発言への抗議だと犯行声明を出している。
 パキスタン下院が14日、全会一致で教皇の発言を批判する決議を採択した。
 エジプトの原理主義組織「ムスリム同胞団」最高指導者ムハンマド・マハディ・アキフ氏は14日の声明で、教皇発言はイスラム教の正確な理解に基づいていないと批判し「宗教間の敵意をあおる発言についての謝罪」を要求した。
 イスラム諸国会議機構(OIC)も14日「イスラムに対するバチカンの新政策でないことを願う」との声明を発表。トルコのイスラム教指導者も同日、今年予定される教皇のトルコ訪問を見直すよう求めた。
 非同盟諸国首脳会議に出席するためキューバのハバナを訪問していたエジプトのアフマド・アブルゲイト外相は15日、「教皇は真意を説明しなければならない。このまま放置することはできない」と述べた。外相は現在の国際社会に「イスラムを非難し、アラブ諸国と西側との緊張関係をつくり出そうとする傾向がある」と、教皇発言への反発の背景を指摘した。
 イスラム諸国会議機構の議長国マレーシアのアブドゥラ・バダウィ首相もハバナで「教皇は怒りが広がっていることを軽視してはならない」と述べ「過ちを正すために必要な措置」を取るよう求めた。
 レバノンのイスラム教シーア派の宗教的指導者で、民兵組織ヒズボラに強い影響力を持つファドララ師は15日の金曜礼拝で「バチカンを通じた謝罪は受け入れない。教皇自身に個人的謝罪を求める」と表明した。
 教皇は17日、自身の発言が引き起こしたイスラム世界での反発を「非常に残念に思う」と遺憾の意を表明したが、それでは不十分だとする声がイスラム諸国には強い。
 国際テロ組織アルカイダ機構は17日付けで「バチカンはブッシュが始めた新たなる十字軍の侵略を後押しした」などとして「ジハードの継続」を宣言した。
 アルカイダ系を含むイラクの複数の武装組織で構成する「イラク・イスラム戦士評議会」も17日、テロなど「ジハード」の継続を表明した。アルカイダと関係があるとされるイラクの武装組織「アンサール・スンナ軍」も18日、教皇を批判し「イスラムの軍隊がローマの城壁を破壊する日は近い」と指摘、教皇へのテロを示唆した。
 18日のイラン国営テレビによると、同国の最高指導者ハメネイ師は「教皇発言は米国のジョージ・ブッシュ(大統領)が始めたイスラムに対する十字軍(のような攻撃)の最新の一撃」、「大悪魔(米国)が背後にいる」などと主張した。
 シーア派の宗教指導者も批判を続けている。高位指導者のハサニ師は18日、「国連安全保障理事会で決議をつくり、教皇を裁判にかけるべきだ」と述べた。
 中国イスラム教協会の陳広元会長は18日、教皇発言が「全世界のイスラム教徒の感情をひどく傷つけた」と述べ、「公開の場での謝罪」を求めた。
 ただマレーシアのアブドゥラ首相は18日には訪問先のニューヨークで「われわれは受け入れることができると思う」と記者団に語った。「教皇はほかの人とは違う」と言動の影響の大きさを指摘、「これ以上、イスラム教徒を怒らせる発言をしないよう望む」と言う。主要なイスラム諸国のうち首脳が教皇の釈明受け入れを明確に表明したのは初めてだが、マレーシアはイスラム世界で穏健派と見なされており、受け入れの動きが他国に広がるかは不明だ。

キリスト教界検索キリスト教界ニュース Last Update : 2006-09-28T02:32:29+09:00