【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世はトリエント・ミサ(伝統的ラテン語ミサ)を、全司祭が実施することを許容する文書(モツ・プロプリオ)を作成した、とバチカン(ローマ教皇庁)筋が明らかにした。
トリエント・ミサはイタリア北部のトレントで開催されていた公会議の中で、1570年にに定められたラテン語のミサで、一部を除いて全世界のカトリック教会で共通して用いられていたミサの様式。1970年以降は、第二バチカン公会議の精神に従って新たに定められた各国語によるミサが用いられるようになったが、保守的なカトリック信徒の中には、トリエント・ミサだけが正統なミサ形式であるとみなしている。現在は教区司教の許可を得ることを条件にトリエント・ミサの執行が認められているが、聖ピオ十世会を創設した故マルセル・ルフェーブル大司教らそれに固執し、ついに独自に司祭を叙階したことなどから1988年破門されている。
教皇はこの9月に「モツ・プロプリオ」を作成中であると語ったという。近く発表されるこの文書は重要だと指摘したことから、ラテン語ミサの使用に関するものであることは確か、とバチカン筋が明らかにした。聖ピオ十世会などとの「和解」を図ったものとの見方が出ている。
カリフォルニア州バークレーのイエズス会神学校の典礼神学専門家トーマス・J・シルギ司祭は、古代ラテン語ミサへの復帰は、第二バチカン公会議に続く「越権」から保守的路線への回帰の象徴と受け取るカトリック者もいよう、と米紙ワシントン・ポストに指摘している。
実際に古くからの信徒にはトリエント・ミサの復活を求める向きがあるが、経験したことのない若手層が実施を求めている(カナダ・ウイニペグのジェームズ・ワイズガーバー大司教)との見方もある、と米カトリックCNS通信は報じている。