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教皇がブラジル訪問、家族強化の確立を強調

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、5月9日から14日まで、ブラジルを司牧訪問した。第5回ラテンアメリカ・カリブ司教協議会総会の開会ミサ司式を主な目的としたもの
 今回の訪問は、2005年のドイツ(ケルン)、06年のポーランド、スペイン(バレンシア)、ドイツ(バイエルン州)、トルコに続く6回目の海外司牧訪問(イタリアを除く)。大陸を越える訪問としては今回が初めて。
 サンパウロ国際空港では、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領をはじめとする政府要人、現地の教会関係者や司教協議会総会の代表者らが教皇を出迎えた。
 教皇は「ここで生まれた提案は、この大陸での伝道に新たな活力と刺激を与えるだろう」として、社会の母体としての家族の強化を確立することを強調、同性者間の関係合法化法案に関しては、「教会にとって家族は唯一、男性と女性によって構成されるものである」と断定した。
 ブラジルの教会で盛んだった「解放の神学」については、「教義からすると間違っているだけでなく、時代遅れになっている」と否定、ネオペンテコステ派がブラジルで急拡大していることには「ブラジル人は神に飢えている」と語った。
 教皇は防弾ガラスに覆われた専用車で都心のサンベント修道院に向かい、雨の中待ち受けた信者ら約5000人の歓迎を受けた。
 教皇は、10日午前、サンパウロ州政庁舎バンデイランティス宮殿にダ・シルヴァ大統領を表敬訪問した。教皇は、大統領の任期満了の2010年までに「学校での宗教教育の実施や、教会区の免税化を実現してほしい」などと要請した。妊娠中絶や避妊具の使用など具体的な議題には触れなかった模様。
 教皇の要請に対し、大統領は「ブラジルを宗教色のない、宗教に関連しない国として維持するよう努力する」と述べた。妊娠中絶を事実上容認するなど、改革派寄りの立場を取る大統領が間接的ながら教皇の要請を受け入れなかったものと見られる。同大統領と個人会談の後、教皇は大統領の家族やブラジル政府関係者とも会見した。
 同日午後、教皇は若者たちとの集会に参加した。会場のパカエンブ競技場は、朝早くから教皇との出会いを求めてブラジル全土や近隣諸国から訪れた参加者でいっぱいになった。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、「イエス・キリストの弟子・宣教者としての若者たち」というテーマで行なわれたこの集いでは、代表数人が学業と仕事の両立の困難さ、失業問題、暴力、麻薬といった問題と同時に、信仰体験、更生への努力、ボランティア活動など、同地の若者たちの様々な現実と希望を提示し、教皇の祈りと励ましを願った。
 教皇は、教会の若さである青年たちに「若者の使徒」となり、道を見出せない同世代の人々と共に歩み、イエスとの出会いによって愛され受け入れられていることを彼らが知ることができるよう、自分たちの信仰の体験と希望と愛を伝えていくよう述べた。
 教皇は11日、福者フレイ・ガルバン(1739〜1822)の列聖式を行い、ブラジルに初の聖人が誕生した。ガルバンはフランシスコ会修道士で、死後200年近く経った今も奇跡の治癒が評価されている。
 教皇は続いてセー大聖堂で、ブラジルの司祭約400人と会合した。福者ガルバンの列聖を機に、ブラジル初め中南米全域に進出してきた福音主義信仰の勢いを覆えしたい考え。教皇は「信仰を捨ててしまったカトリック教徒へ手を差し伸べる努力を怠ってはいけない」と警告した。
 教皇はカトリック教会内で聖職者の独身身分に対する疑問が広まっていることも憂慮しており、「それは教会が受けた維持すべき賜物」と繰り返し述べた。
 教皇は12日、サンパウロ州アパレシダのバシリカ教会に集まった約3万5000人の信者に向けて演説、信仰心をたたえた。
 教皇は、13日から31日まで「イエス・キリストの弟子・宣教者、わたしたちの民がキリストにおいて生きられるように:わたしは道であり、真理であり、命である(ヨハネ14・6)」をテーマにアパレシダで開催される第5回ラテンアメリカ・カリブ司教協議会総会に出席、開会ミサを捧げた。同日午後には、会議全体の指針を述べた。
 一方、教皇訪問に合わせて、ブラジル各地で、同性愛者と妊娠中絶に賛成するカトリック信者の女性らによる抗議運動が展開されている。教皇訪問を、「バチカン(ローマ教皇庁)がブラジルの社会政策を左右しようとしているものだ」と強く非難している。9日夜、サンパウロ中心部で行われた同性愛者らによる抗議運動では、「主イエスはゲイを愛したもう」と書かれたポスターが掲げられた。
 教皇は13日夜に帰国の途につく。

キリスト教界検索キリスト教界ニュース Last Update : 2007-05-15T03:04:10+09:00