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マレーシア最高裁、キリスト教への改宗者にもイスラム教身分

 【シンガポール=ENI・CJC】マレーシアでキリスト教に改宗した女性ライナ・ジョイさんが、イスラム教棄教を理由に投獄の危機にさらされている。マレーシアはイスラム教徒が6割を占めている。同国連邦裁が5月30日、イスラム教から他の宗教に改宗する憲法上の権利はない、と判示した。
 ジョイさんは1998年にキリスト教に改宗、それを法的に認知させるべく7年も法廷闘争を続け、ついに連邦裁にまで持ち込んだが、30日の判決では、ジョイさんの身分証明書の宗教の項目で「イスラム」の字句を消去出来ないとされたもの。
 アハマド・ファイルズ・シーク・アブドル・ハリム裁判長は、「気まぐれで宗教に出たり、入ったりは出来ない。法には従わなければならない。棄教はイスラム法に関係することで、民事法廷は介入出来ない」と述べた。
 ジョイさんは現在所在を明らかにせず、法廷にも出席しなかった。これで問題解決のためには「シャリア」(イスラム法廷)に委ねられることになったが、棄教を有罪とする可能性が多く、ジョイさんは投獄される可能性がある。
 ジョイさんはキリスト者男性との結婚を願っていたが、今回の判決はこれにも大きな障害となりそう。
 イスラム教を国教とするマレーシアは、仏教徒、キリスト者、ヒンズー教徒なども抱えており、今回の判決は宗教の自由を打ち出しているマレーシアには一つの試金石となった。
 「今回の決定は、良心に従って自らの宗教を証しし、実践しようとしているだけの個人を、法的に再規定することの責任を法廷が放棄するという、最近の判決の傾向を反映している」とマレーシア・キリスト教連合のポール・タン・チーイン議長(カトリック司教)は指摘する。
 今回の判決に、イスラム教徒以外の判事はただ1人。そのリチャード・マランユム判事は少数意見。イスラム法廷に委ねるのはジョイさんにとって無意味だ、と言う。同法廷では棄教で有罪になるのは明白だからだ。
 マレーシアの宗教の自由に関わる裁判はこれが初めてではない。異なる宗教の両親から生まれた子どもの親権や埋葬をめぐる紛争もある。ヒンズー教徒の妻からの抗議を排除して陸軍将校がイスラム教徒として埋葬された例もある。
 仏教、キリスト教、ヒンズー教、シーク教、道教のマレーシア協議会のレオナード・テオ弁護士は「宗教の自由などここでは幻想なのだ」と言う。□

キリスト教界検索キリスト教界ニュース Last Update : 2007-06-12T01:03:27+09:00