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カンタベリー大主教の「シャリア法を一部導入」発言に批判相次ぐ

 【CJC=東京】英国国教会の最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏が2月7日、英BBCラジオの番組『ザ・ワールド・アット・ワン』で、英司法制度に部分的にシャリア法(イスラム法)を導入することは「避けられないと思う」と述べた。「過剰な刑罰」や女性差別は認められないと強調しつつ、イスラム法に対して偏見を持つべきではないとしたことが政治問題化し、また宗教上の寛容に関し論争を引き起こしている。
 大主教は、自身の発言が一部から驚きを持って受け止められるであろうと認めた上で、英国内の移民が持つ抑圧感を和らげるためには、すべての移民社会が公的手続きに参加できるようにすることが重要との認識を示した。
 2001年の国勢調査によると、英国には人口の2・7%に相当する約160万人のイスラム系移民が地域社会を形成、離婚や結婚ではイスラム独特の手続きを取っている。現実にイスラム法廷も存在しており、結婚や金銭取引から暴力集団同士の争いの仲裁まで務めている。
 今回の論争の根底には、2005年7月のロンドン地下鉄爆破テロの犯人がイスラム教徒の若者4人だったことから、イスラム社会に対し激しくなった偏見や差別がある。
 英首相官邸の報道官は、1国2制度を認めると法の支配を根幹から揺るがしかねないとして、「英国の法律に違反する行為をシャリア法で正当化することは認められない」と即座に反論した。「ゴードン・ブラウン首相は、英国の司法制度は英国の価値観に基づくべきだと考えている」と言う。大主教周辺からも「彼の発言は英国を驚かせた」などと批判的な意見が相次いだ。
 8日、大主教府はウェブサイトに釈明文を掲載、「大主教はシャリア法の適用を一切提言していない」と主張、マンチェスターのスティーブン・ロー主教も「大主教は2制度などとは言っていない。反論の中には人種差別的な色彩も見られる」と語ったが、批判は収まらない。公に辞任を求める声が少なくとも2件あがった。
 政府が共通の価値観に基づく結束した社会作りを目指しているのに、大主教の発言は英国内の民族的コミュニティーの分断につながりかねないという点に非難が集中している。
 国教会総会代議員のアリソン・ロフ氏は9日、BBCラジオに「ウィリアムズ氏は計り知れないダメージを与えた。彼はきちんとした助言を受けてこなかった点は同情するがこういう事態になった以上、辞任すべきだ」と述べた。□

キリスト教界検索キリスト教界ニュース Last Update : 2008-02-12T00:43:36+09:00