【ワシントン佐藤千矢子】米上院は21日、妊娠後期の中絶方法の一つ「パーシャル・バース・アボーション」(部分出産中絶)を禁止する法案を賛成64、反対34の賛成多数で可決した。下院は今月3日に同じ内容の法案を281対142で可決しており、ブッシュ大統領が近く署名して法案は成立する。
1973年に連邦最高裁が女性の中絶権を認めて以来、部分的にでも中絶を禁止する法案が成立するのは初めて。中絶容認団体は違憲の疑いで提訴する構えで、民主党も強く反発している。大統領選の大きな争点になりそうだ。
ブッシュ大統領は21日、「忌まわしい行為をやめさせ、生命についての価値を築く重要な立法だ。法案に署名するのを楽しみにしている」との声明を発表した。
この中絶方法は、妊娠後期の胎児の一部を妊婦の体外に取り出し、胎児の頭部にハサミで穴を開けて死亡させる方法で、米国で年間数千件実施されているといわれる。法案ではこの中絶手術を実施した医師は、禁固2年以下に問われる。
95年以来、上下両院で、法案に賛成する共和党と、反対する民主党の間で激しい議論が続いてきた。クリントン大統領(当時)は過去、上下両院で可決された法案に対し、2度にわたって拒否権を行使し、署名しなかった。ブッシュ政権になり、法案は今春、上下両院で可決されたが、内容が異なっていたため、法案の一本化調整が行われてきた。
バーバラ・ボクサー上院議員(民主党)は、同日の上院本会議で「史上初めて、女性の健康についての除外規定を何ら設けずに医療行為を禁止するもの。明らかに憲法違反だ」と反対演説を行った。中絶容認団体も、この中絶手術の禁止が他の「安全で一般的な中絶手術」の禁止にも拡大される恐れがあると主張し、反発している。(毎日新聞)