みんなのキリスト教ニュース - 野田秀樹新作「南へ」 神のいない日本、問う

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 昨年、舞台「ザ・キャラクター」でオウム真理教事件を主題に据え、日本人の精神性の弱さを鋭く突いた野田秀樹。

 そんな野田が脚本、演出を担う新作「南へ」が、10日から3月31日まで、東京・池袋の東京芸術劇場で上演される。「神のいない国、日本」を問う。(塩崎淳一郎)

 「日本ではある瞬間、神が消えた。そのすき間を縫ったのがオウム。神が不在だから知的な人もだまされた」と野田。「キャラクター」と同じく新作も「信じるとは何か」を問題提起する。

 作品の舞台は、富士山をイメージした火山。観測所の里長所長(渡辺いっけい)らのもとに、新たに赴任した男(妻夫木聡)、うそつきの女(蒼井優)らが現れる。所員らが噴火を巡って右往左往する中、自らの存在基盤は何か、という根源的な問いにぶつかる。主題は硬いが、起伏に富む物語は笑いの要素も含み、展開に速度感がある。

 渡辺は、野田主宰のNODA・MAP公演への出演は4回目。舞台にほぼ出ずっぱりで、気力、体力を要するきつい役だ。「物語が江戸時代に飛んだりして、俳優として芝居の工夫のしがいがある。僕の役は、典型的な日本人。観客それぞれに典型的な人間像があるだろうから逆に難しい」

 それを野田は、「戦後民主主義社会を、テレビでプロ野球観戦をしながら生きてきた中間管理職的な人間」と表現する。そんな「典型的日本人」への痛烈な批判が、この作品を貫く。

 「キリスト教、イスラム教には、神という絶対の存在がいる。日本では空白のポスト。だからオウムが現れる」と野田。神の不在は戦後に始まる、と考える。「日本人は戦争に負けて何も語らなかった。ドイツ人はナチスの罪を語った。その違いは何か。教会で懺悔(ざんげ)できる彼らと、神のいない我々との差なのか」と、厳しく問いかける。だが、作品は結論を提示しない。

 渡辺は言う。「作品解釈で頭をがんじがらめにされずに、妻夫木や蒼井は純粋で、健康的で、真っすぐに演技に取り組んでいる。それが演劇」。新作のテーマが常に話題を呼ぶ野田作品。だが、先入観なくまず味わうことこそ、演劇の本当の面白さではないか――。「芝居の帰りに思いを語り合うこと。そこから何かが始まる」と野田。演劇というジャンルの可能性を信じる強い思いを語った。(電)03・6802・6681。
(2011年2月2日 読売新聞)


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