みんなのキリスト教ニュース - 陶芸家・荒木高子の作品「点字の聖書」を解読

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 西宮、三田を拠点に聖書をモチーフにした造形作品を制作し、国際的に評価された陶芸家・荒木高子(1921~2004年)。その遺作で甲南女子大(神戸市東灘区)が所蔵する「点字の聖書」を全盲で文学部4年生の荒木温子(あつこ)さん(22)=同市垂水区=が解読し、新約聖書「ヨハネによる福音書」第8章の一節であることが分かった。同大によると「点字の聖書」の解読は初めてといい、作家像の理解がさらに進むことが期待される。(仲井雅史)

 高子は西宮市に生まれ、ニューヨークで彫刻を、帰国後は丹波焼などを学んだ。1979年、聖書が砂のように崩れるさまなどを陶芸作品化した「聖書シリーズ」で日本陶芸展最優秀作品賞を受賞。崩壊途上の聖書を象徴的に表現し深い精神性を感じさせる作品は、米国やフランスなどの美術館にも収蔵されている。

 生涯作り続けた「聖書シリーズ」には英語、ヘブライ語、日本語、点字の4バージョンがある。点字以外の作品は「マタイ伝」の冒頭か「ヨハネ伝」の一節がシルクスクリーンで印刷されているが「点字作品の原典は不明だった」(同大)という。

 同大の所蔵作は一連の「点字の聖書」の初期作(85年制作)で縦33センチ、横約44センチ、高さ約21センチ。昨年11月、遺族から他の作品9点とともに寄贈された。

 保存修理を控えた今年2月、点字に通じる温子さんが解読に挑戦。左右のページに各19行にわたって正確な点字が打たれていることを確認した。表面が波打っている上、ひび割れや剥落が進んでおり、作業は難航したが、友人の協力を得ながら解読を進め、「私たちはアブラハムの子孫」「奴隷」などの言葉や、32、36、38の数字を読み取った。

 前田豊稔(とよとし)准教授(美術教育学)と検討したところ、「真理があなたがたを自由にする」などと記された新約聖書「ヨハネによる福音書」第8章32~38節の文言と一致した。

 高子の弟子らによると、作品を構想した高子は知人に点訳を依頼。それを参考に、つまようじの頭の部分を使って自ら打ったという。温子さんも「点の間隔がまちまちなので、点字器を使わずに一つ一つ点を押したことが分かる。聖書の内容を作品化しようとする強い意志を感じた」と話す。

 同大は今後、聖書の邦訳のうち、どのテキストが使われたのかなどを研究し、作品の制作過程や背景の解明を目指す。

神戸新聞 2011/03/06 14:27


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