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奴隷貿易の廃止に誇り 映画「アメイジング・グレイス」
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admin
5006 日 前
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欧米諸国が近代以後もアフリカで続けた奴隷貿易。その廃止を訴える英国の若き政治家の存在を掘り起こした映画「アメイジング・グレイス」が首都圏で公開されている。ドキュメンタリーも手掛ける英国出身のマイケル・アプテッド監督が指揮を執った。
18世紀の英国。裕福な家に生まれたウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は、奴隷貿易に心を痛め、後に首相になるピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に政治家になる。仲間を集めて廃止をめざすが、たびたび妨害されて病に侵される。
題名の「アメイジング・グレイス」は賛美歌で、作詞した奴隷船の元船長ジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)は、多くの奴隷を犠牲にしたことを後悔し、後に聖職に就いた。劇中では独唱と演奏で2度この曲が流れ、ウィルバーフォースの支えになる。
「魂があるうえ、思いやりや心の温かさを持ち合わせた男。頑固にあきらめずに活動するが、人によっては弱いと思われるほど内省的」。ウィルバーフォースをそんな人物像にしたのは、「奴隷制度廃止に心血注ぐ姿を感じさせたかった」からだった。
現代日本の国会より、議論を積み重ねようとする18世紀の英国議会の方が、よほど成熟していますね、と話すと、「英国でも当時の議会を代表していたのは、地主の利益を追求する上流階級の意見だった」と述べた。
奴隷貿易の廃止について、「英国民にとって、非常に誇らしい出来事。50年後のリンカーンによる奴隷解放宣言に先駆けた、重要なステップだった」とみる。また「白人の利益だけを考えない人道的な行為だった」と、道義上の意義だけでなく、「国益」を害することを承知の上での行動だったことを重視する。
監督には、隠れた意図がある。英国での公開の際、子供向けの上映キャンペーンをした。この映画を通して、先進国が発展途上国の安い労働力を使って食糧や資源を搾取する現状に警鐘を鳴らすためだ。「奴隷や人身売買のような過酷な使役をされる労働者は、いまの方が多い。そんなことはなくすべきだ」。理想を語る姿は、ウィルバーフォースと重なった。(井上秀樹)
asahi.com(朝日新聞社)2011年3月7日14時52分
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