みんなのキリスト教ニュース - 古代の世界 - 悲劇の聖人の遺骨、イタリアで発見か

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 イタリアで発見された人骨について、約2000年前に生き埋めの刑に処されたと伝えられる初期キリスト教の聖人夫妻の遺骨と推定する研究結果が14日に発表された。

 イタリア北部の町、レッジョ・エミリアの聖堂で長いあいだ封印状態で保管され、最近になって発見された人骨を分析した結果、伝説の聖人クリサントゥスとダリアのものである可能性が出てきた。伝承によると、2人はキリスト教に改宗したことがもとでローマで処刑されたという。

 古代の病理学が専門で、調査を率いたジェノバ大学のエツィオ・フルケーリ氏は、人骨の身元を100%確実に突き止める方法はないものの、「これまで集めてきた証拠すべてが、この遺骨がクリサントゥスとダリアのものであることを示している」と声明で述べている。

 今回の発見のきっかけは、2008年にレッジョ・エミリアの聖堂の改装中に、主祭壇の下の封印された地下室から300片以上の人骨が見つかったことだった。

 これらの人骨から、2体のほぼ完全な全身骨格が復元された。それぞれの頭蓋骨も、金銀製の胸像に収められた形で、聖堂の地下室奥深くから見つかった。トリノ大学の人類学者アレッサンドラ・チンティ氏によれば、頭蓋骨がここに移されたのは500年ほど前のことだという。

 フルケーリ氏が率いる研究チームは人骨を精査した結果、この骨の持ち主である男女は死亡時におおむね健康な状態にあったと結論づけた。

 細身で小柄な骨格、広い骨盤、とがったあごの骨の形などから、一方は20代半ばの女性と推測された。フルケーリ氏によると、その後のDNA分析でも女性であることが確認されたという。

 研究チームでは、この女性はダリアではないかと推定している。ダリアはウェスタの処女と呼ばれる、古代ローマの女神ウェスタに身を捧げた高位の巫女だったが、キリスト教に改宗したと伝えられている。

 もう1体は、ほぼ成人に近いが完全に成長しきってはおらず、死亡時点で結合途中だった骨も一部あった。このことから、遺骨は17~18歳の人物のものと推測される。その後のDNA検査により、こちらの人物は男性と判明した。

 古来の伝承と研究チームの結論が正しければ、こちらはクリサントゥスということになる。

 加えて、伝承のクリサントゥスとダリアと同様に、今回新たに発見された男女は上流階級に属していたようだ。骨には肉体労働による変形や摩耗の跡が見受けられない点などがその証拠として挙げられる。

 また、年代調査により、2人の人骨は西暦80年から340年の間のものであることがわかった。クリサントゥスとダリアは西暦283年に処刑されたと考えられている。

 言い伝えによれば、裕福な古代ローマの元老院議員の息子だったクリサントゥスは、10代のころにキリスト教に改宗したという。

 これを重大な過ちと考え、是が非でも改宗を阻もうとしたクリサントゥスの父は、息子をウェスタの処女を務めていた女性、ダリアと結婚させることにした。

 ローマにあったウェスタの祭壇では、6人の処女が聖火を守る任にあたっていた。この聖火は繁栄を象徴するもので、ローマの街の守り神と信じられていた。名前からもわかるように、ウェスタの処女はその任にある間、純潔を守るよう定められていた。

 クリサントゥスをキリスト教から引き離そうとした父親の計画は裏目に出たと、伝説は伝えている。彼は逆にダリアをキリスト教に改宗させてしまったのだ。2人は結婚するが、貞操を守り、神に身を捧げる誓いを交わした。

 ローマ帝国にとってはさらに悪いことに、2人の働きかけにより、多くの人がキリスト教に改宗していった。こうした点をとがめられたクリサントゥスとダリアは捕らえられ、拷問を受けた。

 伝説によれば、クリサントゥスは投獄され、ダリアは売春婦に身を落とす刑を受けた。だが2人とも、この時は奇跡によって難を逃れたとされている。

 こうした神からの助けもむなしく、クリサントゥスとダリアは最終的に死刑に処された。最も広く知られたストーリーでは、2人はローマで生き埋めの刑に遭ったと伝えられる。

 クリサントゥスとダリアが埋葬された場所には、キリスト教の聖堂が建立されたと言われている。その後、聖人となった2人の骨は何度か場所を移した末、最終的に西暦1000年前後にローマの数百キロ北にあるレッジョ・エミリアの街に落ち着いたとされる。こうした伝承は、今回の新たな分析結果とも一致しているというのが研究チームの見解だ。

 研究チームを率いたフルケーリ氏もナショナルジオグラフィック ニュースに対し、「この仮説を覆す証拠はあがっていない」と述べている。

Photograph courtesy Max Salomon, National Geographic Television


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