みんなのキリスト教ニュース - 耐えた「ケセン語」聖書 水没の方言訳、注文次々--岩手・大船渡

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 東日本大震災の津波で全壊した岩手県大船渡市の出版社の倉庫から、新約聖書を地元の方言に訳した「ケセン語訳 新約聖書」の在庫約3000冊が見つかった。水にぬれ、一部は泥が取れないが、「大津波に耐えた聖書」と注目を集めている。

 聖書は、大船渡市の熊谷雅也さん(58)が経営する「イー・ピックス」が02~04年に全4巻を出版した。津波で同市大船渡町の事務所は流され、そばにあった鉄骨2階建ての倉庫も2階の床が落ち全壊。外壁は残ったが、屋内にあった約8000冊の在庫は津波でかき回され散乱した。

 聖書は約300の段ボール箱に分けて梱包(こんぽう)されていたが、箱は泥まみれ。「売り物にならない」と思って開けると、付属の外箱が泥と水を吸収し、本は乾かせば、しわは残ったが十分に読める。

 筆者である大船渡市の医師、山浦玄嗣(はるつぐ)さん(71)は大船渡市、陸前高田市など気仙地方の方言を「ケセン語」と命名。新約聖書の中の四つの福音書をギリシャ語の原典からケセン語に翻訳した。知人である三浦綾子記念文化財団(北海道旭川市)副理事長の工藤正広さんは「津波の洗礼を受けた聖書なんて聞いたことがない」として、運営する文学館で定価販売してくれることになった。米デトロイトの日本人宣教師からも注文が来た。

 「神様んすぅ、神様んすぅ、何故俺(なしておれ)ぁどごぉ見捨てやりぁしたれ?」(わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか)

 被災直後、そんなケセン語聖書の一節を頭に浮かべたという山浦さん。予想もしなかったが、聖書は最近1カ月で約300冊が売れた。「被災地を応援しようと買ってくれたのだと思います。もう一度頑張る気持ちになれます」

 聖書は各巻5880~6090円。問い合わせはイー・ピックス(080・6003・4319、masaya@epix.co.jp)。【黒田阿紗子】

毎日新聞 2011年5月25日 東京夕刊


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