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田中正造ら通じ描く-マイタウン石川
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4563 日 前
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◆幕末・明治のキリスト者◆
~*金沢の木越邦子さんが新著*~
金沢市在住のキリシタン研究家、木越邦子さん(68)が、新著『幕末・明治期 キリスト者群像』(現代企画室)を刊行した。詩人でもある木越さんの研究書は、泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞した『キリシタンの記憶』(桂書房)以来、6年ぶり。
~*信仰と社会的活動の相克*~
東京・八王子で自由民権や被差別部落解放の運動に身を投じた山上卓樹、日露戦争反対を貫いた内村鑑三、内村との交友などを通じてキリスト教に接近した田中正造らを取り上げ、信仰と社会的活動の矛盾や相克も描き出す。
足尾銅山の鉱毒問題に取り組んでいた内村が実践を離れて聖書研究に没頭しはじめたとき、正造は「聖書を捨てよ」と忠告したという。正造はキリスト教に関心を寄せながら、同時に社会の変革を見据え、自治の問題を考え続けた、と木越さんは見る。
洗礼を受けずに亡くなった正造は、一般的にはキリスト者とはみなされていない。しかし正造が残したわずかな遺品の中には、小石やちり紙とともに、聖書、手製のマタイ伝と憲法の合本があった。
カトリックの聖職者が貧困や人権問題に積極的に取り組む「解放の神学」がラテンアメリカで広がったのは、1960年代のことだ。「これまで指摘されていませんが、正造はアジアにおける『解放の神学』の先覚者であったのではないでしょうか。日本でその流れが発展することがなかったのは残念です」
木越さんは、20歳のときに洗礼を受けたカトリック信者だが、どこかで「ここが自分の居場所なのか」という違和感を抱えていたという。
転機になったのは、1988年のニカラグア旅行。詩や小説に興味を持ったことがきっかけだったが、現地の人々とふれあい、「解放の神学」を実践して左派政権に参加していた司祭たちとも交流した。
「内戦の中で迫害された人々が生き残るとはどういうことなのか。現場を見ることで、日本のキリシタン史のなかの弾圧が重ね合わさって実感されました。そこで私は、初めて本当にキリスト教徒になったような気がします」
序文は、やはりカトリック信者で作家の加賀乙彦さんが寄稿している。251ページ、1890円。
(樋口大二)
朝日新聞デジタル:2012年05月16日
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