みんなのキリスト教ニュース - キリスト教徒 襲撃相次ぐ エジプト・イスラム急進派の標的

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 【カイロ=野村悦芳】エジプトで人口の約一割を占めるキリスト教の一派コプト教徒が暴徒化したイスラム急進派に襲撃される事件が相次いでいる。コプト教徒の多くがイスラム教組織出身のモルシ前大統領に反対の姿勢を取ったことで憎悪の標的になった。十四日以降、六人のコプト教徒が殺害され、教会も襲われた。イスラム教徒とキリスト教徒の対立がエスカレートする懸念が膨らんでいる。 
 「善良な兄でした。政治活動をしていたわけでもない。なぜこんな目に遭うのか」。コプト教徒の大工エドワード・ファレスさん(39)が声を震わせる。指さした車庫の入り口には大量の血の痕。兄ファウジ・ファレスさん(49)が銃で頭を撃ち抜かれ死亡した場所だ。
 コプト教徒が八割を占めるというカイロ北東部の住宅地。焼け焦げた車が放置され、建物の壁には銃弾による傷がある。雑貨屋は全焼していた。住民が口々に「最悪の状況だ」と恐怖を訴えた。
 銃やナイフで武装した約三百人が押し寄せたのは十五日夕方。治安部隊がデモ隊を強制排除し、モルシ派側に多数の死者が出た翌日だった。暴徒はコプト教徒をののしりながら銃を乱射したと住民は証言する。
 コプト教組織、マスペロ青年連合によると、六人の死者のほか全土で三十八カ所の教会が放火などで完全に破壊された。マスペロ青年連合幹部のミナ・タベト氏は取材に対しモルシ氏の出身母体ムスリム同胞団が「政治的な争いを宗教戦争に転化しようとしている」と強く非難した。
 ムスリム同胞団幹部のマヘル・アッバス氏は取材に対して「同胞団はコプト教徒を攻撃していない」と暴力を否定。「治安部隊とギャングが組んでいる。われわれを攻撃しやすくするためテロリストに仕立ててイメージを落とそうとしている」と暫定政権側による陰謀説を強く主張した。
 コプト教はエジプトを中心とする東方正教会系の少数派。エジプトでは常にイスラム系住民や政府との摩擦にさらされてきた。昨年の大統領選でコプト教徒の多くがモルシ氏の対抗馬を支持、さらに反モルシ氏のデモに大挙して参加したことでイスラム急進派の反感は決定的に高まった。
 エドワードさんは「宗教対立はもうたくさんだ。兄の死だけで十分です」と嘆いた。

東京新聞 2013年8月20日 朝刊


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