みんなのキリスト教ニュース - バチカン図書館の「革命」―NTTデータと進める文献電子化

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 【バチカン】バチカン図書館は所蔵する手書きの文献をデジタル化し、インターネット上で無料公開する。世界有数の重要な文献のコレクションがクリック1つで閲覧できるようになる。

 バチカン図書館が所蔵する手書き文献は、最も古い2世紀の文献を含めて8万2000点超、4000万ページに上る。同図書館は日本のNTTデータと契約、第1段階として4年間で3000点の文献をデジタル化する。作業は50人の専門家が5台のスキャナーを使って進める。

 バチカン図書館はローマ法王ニコラウス5世が15世紀半ばに設立した。同図書館所蔵の貴重な手書き文献が初めて一般に公開されることになる。

 法王の図書館として知られるバチカン図書館にとって、文献のデジタル化と一般公開は革命といえる。現在、研究者が図書館を利用するには詳細を明記した申請書を提出しなければならない。しかし、ルネサンス期の画家ラファエロが研究したという、古代ローマの詩人ウェルギリウスの詩が書かれた1600年前の文献など非常に貴重な文献のほとんどは、閲覧が禁止されている。

 教会史学者でバチカン図書館を数回利用したことがあるアルベルト・メローニ氏は「そのような貴重な文献を多数の見学者から守る手段として賢明な措置」と話した。「誰でも見学できるのであれば、『モナ・リザ』の前で子どもに絵筆を渡すのと変わらない」

 文献のデジタル化は既に大英博物館、フランス国立図書館、ケンブリッジ大学図書館など有名な図書館で実施されている。バチカン図書館のチェザレ・パシーニ館長は計画を発表した際、「人類全てに対する貢献」だと語った。バチカン関係者はNTTデータの専門家と協力し、1年をかけて、特に破損しやすい文献を処理するための特別なスキャナーのテストを実施した。時計や宝飾品を外し、手袋をつけた専門家がテストを繰り返し、スキャナーが文献を破損しないことが確認された。

 スキャナーには文献に当たる光を抑えるための保護スクリーンが設置されている。文献の読み取りを行っている間は外部からほこりや余分な光が入ってこないようにするため、窓とカーテンを閉じなければならない。テストが終了したため、イタリア、日本の技術者約50人が間もなく手書き文献のデジタル化に着手する。作業はバチカン関係者の立ち会いの下、図書館の内部で行われる。

 スキャナーで読み取ったデータは長期保存用の形式に変換され、バチカン図書館のウェブサイトで公開される。最初の公開は今年後半になる見込み。最終的には、破損の可能性が非常に高いものも含めて全ての手書き文献のデジタル化を行う予定で、さまざまな角度からの文献の研究が可能になる。

 バチカン図書館が所蔵する手書き文献は4京3000兆バイトに上り、そのデジタル化は気の遠くなるような作業になる(英数字1文字で1バイト)。同図書館は計画の完了時期を明らかにしていない。

 万が一、原本が破損した場合でも文献の画像を保全できるように、災害時のデータ復旧のための仕組みも導入される。中世の神学が専門で、セントルイス大学のデジタル人文センター所長のジェームズ・R・ギンサー教授は「恐ろしいことが起きたとしても少なくとも(デジタルデータは)失われることはない。そんなことがないように神に祈るが」と語った。

 NTTデータは3000点のデジタル化について1800万ユーロ(約23億円)で契約したが、この費用をカバーするため、スポンサーを募っている。バチカン図書館のウェブサイトでは、読み取った文献の画像の隣にスポンサーのロゴを表示する予定。手書き文献のデジタル化が完了しても、図書館で実物を見たいという学者や研究者は絶えないとバチカン関係者はみている。

 新約聖書と初期キリスト教が専門で、バチカン図書館を利用したことがあるノートルダム大学教授カンディダ・モス氏は「手書き文献に実際に触れてみることは非常に大事だ。図書館に行って初めてそれができる」と話す。

 文献が一般公開されてがっかりするのはバチカン陰謀説を唱(とな)える人たちかもしれない。ダン・ブラウン氏などのミステリー小説では、バチカンの文献に隠された秘密が物語の鍵として登場することがある。

 文献が一般公開されて不名誉な文書が表に出る可能性はあるだろうか。ローマ・カトリック教会の司書を務めるジャン・ルイ・ブルゲス大司教に尋ねると、大司教は笑って、「隠さなければいけないことは何もない」と答えた。


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